桜が散った4月〜5月。道端を歩いていると見かけるオレンジの花
観賞用のポピーにそっくりですが、実は「ナガミヒナゲシ」と言う名前の植物です!
最近まで見なかったのに、気付いたらあちこちに自生しているナガミヒナゲシ、一体どんな植物なのでしょうか?
「ナガミヒナゲシ」はどんな植物?
和名 | ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟) |
学名 | Papaver dubium |
自然分布 | ヨーロッパ地中海沿岸 |
分類 | ケシ科ケシ属 |
日本でポピーと言うと一般的には園芸種のアイスランドポピーやシャレーポピーを指すことが多いですが、実はケシ属を英語でPoppyと言いますので、ナガミヒナゲシをポピーと読んでも間違いではありません・・!
よく「ケシ」と言うと、えっ!麻薬!?と思われる方も居るかもしれませんが、このナガミヒナゲシに麻薬成分は含まれていません
このナガミヒナゲシは国立環境研究所の侵入生物データベースに載る外来植物。1961年に日本に入ってきてから、わずか50年足らずで日本全国に生息域を広げています
爆発的な繁殖と日本への帰化
ナガミヒナゲシは爆発的な勢いで生息域を広げています
1961年に東京都世田谷区で初めて確認されてから2007年までのわずか46年間で沖縄県、青森県を覗く全国で確認されるようになり、その生息域は現在でも広がっています
昨年まで見たことなかったのに、今年は沢山生えてる・・なんてことも
今では完全に日本に帰化しており、雑草として身近な植物になってしまいました
あまりに急速に生息域を広げているので、危険な外来種だ!と言う扱いを受けていますが、特定外来生物には指定されておらず、法律の制限を受けている種ではありません
圧倒的な繁殖能力
ナガミヒナゲシが短期間でここまで生息域を広げることが出来たのは、その圧倒的な繁殖能力のおかげです
他植物を圧倒するその繁殖力は、外来種であっても褒めたくなるレベル!
・1株で15万粒の種
・土壌を選ばずどこでも自生
1株から15万粒の種
ナガミヒナゲシはその名の通り「長い実」を付けますが、その実の中には約1600粒の種が入っています
大きな株であれば100個近い実をつけることもあるため、1株で15万粒もの種を生み出すことができるのです
凄いのはその数だけではありません
開花後ナガミヒナゲシの実はすぐに熟して乾いていきますが、その際写真のように柱頭との間に7-9箇所の隙間ができます
これが種の射出部となっており、地上20cm〜60cmまで伸びた茎の先にあるこの実が風などで揺らされる度、中の種を広範囲に撒き散らします
この柱頭が残っていることで傘の役割もしているので、種が雨に濡れて実の中で腐る・・ということも少ないんです・・笑
まぁでも・・種が多いだけだよネ
マンボウだって3億個卵産むって言うし・・・
いやいや、ナガミヒナゲシ・・どこまでもエリートです笑
土壌を選ばずどこでも自生
撒き散らされた非常に小さな種は、結実から5年経っても発芽することが可能。さらにその発芽適温は7〜25℃!
ちなみレタスの発芽適温は15~20℃。発芽適温から見て、いかにこのナガミヒナゲシの発芽能力が高いかよく分かります
さらに、ナガミヒナゲシは土壌を選ばず発芽・成長していきます。たとえ道端であろうと、コンクリートの割れ目であろうとお構いなし、どこでも自生可能です
ナガミヒナゲシが道路沿いに多いのは、厳しい道路環境で自生できるということと、種が車のタイヤなどにくっついて運ばれるためと言われています
その能力、どこで手に入れたの・・
駆除したほうがいい?
上記でも紹介した通り、ナガミヒナゲシは特定外来生物には指定されておらず、法的に規制されていません
個人での栽培が原則OKの植物ですし、無闇に駆除する必要はないかと思います
ただし、一部の自治体では在来植物の保全目的にナガミヒナゲシ の駆除を推奨したり、農地に近い場所などで駆除を依頼しているところもあるので、場所によっては駆除が必要と言えます
ナガミヒナゲシは他の植物の生育を阻害するアレロパシー活性があり、この点からリスクの高い植物だと言われることもあります
駆除方法
ナガミヒナゲシを駆除したい場合は、実をつける前に引き抜いて処理するのが理想です
↓この状態の時に引き抜く(乳液が手につくとかぶれる恐れがあるので、手袋の着用をオススメします)
実がついているナガミヒナゲシを処理する場合は、実の部分を取ってから株を引き抜いて処理すると良いです。(最初に全ての実を取ってしまうのがポイント!)
取った実はそのままにせず袋などに入れて燃えるゴミに出すなど種が残らないよう処理してください
未熟な実であっても、中の種には発芽能力があるのでそのままにしておいてはダメです。必ず取って捨てるようにしましょう
ナガミヒナゲシとの共存を考えよう
その圧倒的な繁殖能力の結果、短期間で日本中に生息域を拡大できたナガミヒナゲシですが、それだけに人々の視線を集めてしまうことになってしまいました
ナガミヒナゲシに欠点があるとすれば「目立ちすぎる」ところでしょう
出る杭は打たれるとはよく言ったものです・・笑
しかし、日本に生息する植物4000種のうち1200種は海外から人間によって持ち込まれた帰化植物です
その中には、水辺に繁殖して水質を急激に悪化させる植物や、花粉症を引き起こすブタクサなども含まれており、ナガミヒナゲシよりも遥かに人への影響が大きい植物が沢山あります
それに比べれば、ナガミヒナゲシは可愛いものです
さらに言えば、今更になって全国的な駆除は不可能です・・
ナガミヒナゲシ ではありませんが、あへん法により栽培が禁止されている同じケシ科のアツミヒナゲシは際限無く駆除が繰り返されてきましたが、その甲斐むなしく全国各地に定着してしまっています
アツミゲシが最初に発見された1964年当時は、愛知県警察のみならず自衛隊まで出動する騒ぎとなり、火炎放射器や重機を繰り出して駆除に及んだ。その後、際限なく駆除が繰り返されてきたが、未だ根絶されていないどころか、現在全国各地に事実上定着している。
参照:ウィキペディア
定着を阻止するために全力を尽くしたにも関わらず全国に定着・・・すでに定着しているナガミヒナゲシを根絶するのは不可能に近いでしょう
農地の近くなど、場所によっては繁殖を許してはいけない存在ですが、冷静な目で見ると雑草の中では可愛い花を咲かせる方ですし、これからはある程度受け入れて共存していく・・という選択肢も視野に入れる必要があるのかもしれません