なぜ日本の農業は生産性が低いのか?|これからの農業を考える

こんにちは!植物も、農業も大好きなマルネです!

突然ですが、農業というとどんなイメージが湧きますか?

多くの方は、田舎で畑を耕しているイメージや、儲からない、キツそう、汚れそうというイメージを持つ方が多いかと思います

実際に、日本の農業は名目GDPと就業者数の比較で見ると、全産業の労働生産性(GDP/就業者数)が833万円であるのに対し、農業の労働生産性は229万円とかなり低くなっており、儲かる産業とはいえません(2015年データ)

出所:フードバリューチェーンが変える日本農業

では、なぜここまで日本の農業の生産性が低いのか?今回はその理由、そして、将来の日本農業を盛り上げていくためにはどうしていくべきなのかなどについて、解説していきたいと思います!

生産性が低い理由

まず、日本の農家の生産性が低い原因として、「小規模農家数が多い」ということが挙げられます

農林水産省の統計によれば、H28年度の時点で総農家は126.3万戸。減少傾向にあるとはいえ、農業先進国オランダの農家数5.67万戸(H28年)よりも22倍ほど農家が多いです

日本はオランダよりも人口が約7倍多いですが、それを加味しても日本の農家数は多く、フランスやドイツなどのヨーロッパ諸国と比較しても、日本の農家数は多いと言えます

小規模が多すぎる日本農業

農家数が多いと言っても、日本はアメリカのように土地があるわけではありません。日本の耕地面積はH28年度時点で447.1万haとなっており、一戸あたりの平均耕地面積は3.5haです

この一戸当たり3.5haは、ヨーロッパ諸国の平均耕地面積(2016年)フランス61ha、ドイツ60ha、オランダ32haと比較してかなり小さく、日本の農家は小規模だと言えます

出所:フードバリューチェーンが変える日本農業

当然ながら耕地面積が少ないと生産量も少なくなり、生産性は下がります。一般的に農業は大規模で行う方が単価あたりの生産コストが安くなるため、小規模農家は効率が良いとは言えません

小規模農家が多い理由としては、これまで国が兼業農家維持農政などの保護農政を行って来たからだと言われています。保護農政は色々な補助金や制度によって、小規模な農家を守る農政であり、競争があまり起きないようになっていました。そのおかげで、競争力の弱い小規模農家が生き残ることができたのです

ここで、小規模農家が多くなってしまった理由として挙げられる、保護農政について簡単に解説したいと思います

保護農政の弊害と成長農政への転換

競争力の弱い小規模な農家を守る保護農政には、食糧の安定供給、食文化の多様性、経済的に弱い農家を守れるなどたくさんのメリットはありますが、一方で大きなデメリット、弊害もあります

保護農政の弊害

・農家に経営者意識が生まれない

・生産調整などによって、土地生産性を向上させる意欲、技術が停滞

・新規就農者が少なく、業界の高齢化が深刻に

保護農政の特にわかりやすい事例として、米の減反政策が挙げられます。需要の低下した米の価格が落ちるのを防ぐため、農家に減反(田畑を休ませる)してもらい、米を生産せずに他の作物を育ててくれたら補助金を支給するなど、実質的に米の価格調整、生産調整を行いました。

農家からしてみれば、国から言われた通りに米を作り、言われた通りに減反していれば競争することなく収入が安定した生活ができるため、あまり知恵を絞って努力する必要がなく、結果的に経営者のやる気を削ぐことに・・

競争がないことは良いように思えますが、競争が起きないように管理されている市場では、ビジネスチャンスを掴もうと新規参入してくる若者も少なく、生産性を高めようとする経営努力、そもそも経営者としての意識も育ちにくいのです

成長農政への転換

自然環境に左右される農業には今後もある程度の保護は必要ですが、自由貿易化が進む現代では、海外の農作物に負けないよう品質、価格面で競争せざるを得ない状況へと変化しています

そのような環境変化もあり、保護農政と呼ばれる農政は1970年頃に政策(生産調整)が始まってから現在まで長期間続いていますが、2013年頃から徐々に変化が始まっています

2013年とはズバリ、日本がTPP参加を表明した年です

日本農業は1990年〜2010年の間、「農業の失われた20年」と呼ばれるほど土地生産性、労働生産性が上がらない期間があり、政府はこの悪い流れからの脱却として、思い切った政策を打ち始めたのです

代表的なものはTPPへの参加表明でしたが、2014年の農政改革、農協法の改正などによって、徐々に保護農政から成長農政へと変化していきます

TPPなどに参加して保護農政から脱却するということは、保護をやめて海外とも競争していくという側面もあるため反対運動も大きいものでしたが、こうした反対を受けつつも、当時の安倍首相は農政改革を推し進めていきました

その結果、2010年〜2015年間のわずか5年の間に農業所得の平均が1.4倍になり、2017年までの7年では1.8倍と、驚異の伸びを見せました。保護農政からの転換によって、小規模な農家が廃業したことなども背景にはあると思いますが、それにしても7年で2倍近い伸びを見せたのは驚きです

これからの日本農業

これからの日本農業は自由貿易などによって、ますます海外の安い農作物と争っていかなくてはなりません。必要なのは、競争に勝てる農家を増やしていくことです。そして、勝てる農家を増やしていくためには、業界にある程度市場原理を働かせる必要があります

市場原理が働けば、競争力のある農家がどんどん成長していく、逆に競争力のない農家は廃業したり、どこかの農家の傘下に入ったりすることになります

結果的に、小規模農家が減り競争力の強い大規模農家が増えます。

ちなみに、農家の大規模化は既に始まっており、2010年には大規模農家は全体の1%にも満たず、産出額も全体の3分の1程度であった大規模農家が、2020年には産出額の2分の1を担うまでに成長しています。元々農業は規模が大きい方が効率が良く、生産性が高いです。資金力のある大規模農家は農業機械など設備投資にお金をかけることができるため、小規模農家よりも圧倒的に優位です

補助金などによって守られるのではなく、競争の中で強い農家を生み出す。そして儲かる産業になり、新規参入者を増やす

こうした良いサイクル継続できるかどうかは、これからの農政にかかっていると言っても過言ではありません。就農者が激減してくこれからの社会で、日本の農業、日本の食がどうなってしまうのか

大きな変化を求められている中、農政には目が離せません

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